MEN'S INSIGHT 男のインサイト

疲れて見える40代男性の共通点。睡眠・姿勢・表情の整え方

30秒でわかる要点

  • ・仕事のストレスは扁桃体を過敏にし、dlPFC(背外側前頭前野)による制御を効きにくくする
  • ・ストレスでコルチゾールが増え交感神経が興奮すると、寝つきが悪くなり深い眠りが減る
  • ・深いノンレム睡眠は副交感神経が優位な状態で作られる。ゆっくりした腹式呼吸がその切り替えを助ける
  • ・睡眠薬は種類によって依存性が異なる。自己判断の使用・中断は避け医療機関に相談する
  • ・寝る前の飲酒とスマホは体感以上に睡眠の質を下げる

「別に太ったわけでも、老けたわけでもないのに、最近『疲れてる?』と聞かれることが増えた」——40代になると、こう感じる男性は少なくありません。

原因の多くは、体力の衰えではなく回復力の低下です。仕事のストレスが抜けきらないまま眠りにつき、浅い眠りのまま朝を迎える。これが毎日積み重なることで、表情・姿勢・肌の血色にじわじわと現れてきます。

この記事では、色気や若さを「体力」や「見た目の若作り」で取り戻そうとするのではなく、回復と余裕という切り口から、仕事のストレスをどうコントロールし、どう眠り、どう1日をリセットするかを、脳科学・睡眠科学の研究をもとに整理します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の症状の診断・治療を保証するものではありません。不眠や強い不調が続く場合は、医療機関への相談を検討してください。

1. なぜ「疲れて見える」のか——見た目は正直に脳と体の状態を映す

まず前提として、「疲れて見える」ことは主観の問題ではなく、他者からも客観的に観測される現象だという研究があります。

スウェーデン・カロリンスカ研究所のAxelssonらは、被験者を「十分な睡眠をとった状態」と「一晩寝不足にした状態」でそれぞれ撮影し、65人の評価者に写真を見せて健康度・魅力度・疲労度を評価させました。その結果、寝不足の状態の写真は、同一人物であるにもかかわらず「より疲れて見える」「より魅力的でない」「より不健康に見える」と評価されました(Axelsson et al., BMJ, 2010)。

さらに2017年の追跡研究では、寝不足の顔は「一緒に過ごしたいと思われにくい」という社会的な関わりやすさ(社会的魅力)の低下にもつながることが示されています(Sundelin et al., Royal Society Open Science, 2017)。つまり、寝不足は「疲れて見える」だけでなく、対人関係における第一印象にも影響するということです。

これは「若く見せる」ためのテクニックの話ではありません。回復が足りていない状態が、そのまま表情や肌に表れるという、生理学的に裏付けられた事実です。だからこそ、この記事では小手先の身だしなみではなく、回復のメカニズムそのものに焦点を当てます。

2. 仕事のストレスをコントロールする脳の仕組み——背外側前頭前野と扁桃体

「ストレスに強くなる」という言葉はよく使われますが、脳科学的には、ストレスは「感じないようにする」ものではなく、うまく制御(regulate)するものとして研究されています。そのカギを握るのが、背外側前頭前野(dlPFC:dorsolateral prefrontal cortex)と扁桃体(amygdala)の関係です。

2-1. 扁桃体は「警報装置」、dlPFCは「制御室」

扁桃体は、脅威や不快な刺激に反応して恐怖・不安・怒りといった情動反応を素早く引き起こす脳部位です。一方、背外側前頭前野を含む前頭前野は、状況を客観的に評価し直し(認知的再評価)、扁桃体の過剰な反応を抑える役割を担っています。

fMRI研究のメタ解析でも、ネガティブな感情を抑えようとする「感情調整」の場面では、背外側前頭前野を含む前頭前野の複数領域(腹外側・背外側・背内側前頭前野)の活動が一貫して高まることが報告されています(Morgan et al., Neuropsychopharmacology, 2021 のレビューより)。

2-2. ストレスがかかると、この制御関係が崩れる

重要なのは、ストレスや不安が強い状態では、この扁桃体→dlPFCの回路そのものが変化するという点です。児童を対象とした研究では、不安・ストレスのレベルが高いほど、扁桃体からdlPFCへの因果的な影響(神経回路上の情報の流れ)が強まる一方で、dlPFC自体の働きは意思決定の精度と結びついていたことが報告されています(Qin et al., Biological Psychiatry, 2020)。

簡単に言えば、「疲れて余裕がない時ほど、警報装置(扁桃体)の声が大きくなり、制御室(dlPFC)が振り回されやすくなる」ということです。仕事で些細なことにイライラしたり、普段なら受け流せるひと言に過剰反応してしまうのは、意志の弱さではなく、この神経回路のバランスが一時的に崩れているためと考えると理解しやすくなります。

2-3. 制御室は「訓練」できる

逆に言えば、dlPFCの働きを支える生活習慣を整えれば、この制御機能は維持・強化できるということでもあります。リアルタイムfMRIニューロフィードバックを用いた研究では、右dlPFCの活動を自己調整するトレーニングによって、感情調整のネットワークと扁桃体との結びつきが変化し、感情調整能力そのものが向上したことが報告されています(Zhao et al., Frontiers in Human Neuroscience, 2021)。

dlPFCが十分に働くための土台となるのが、後述する睡眠です。睡眠不足の状態では、この前頭前野による制御機能が真っ先に低下することが知られており、「疲れている時ほど扁桃体が暴走しやすい」状態は、まさに寝不足の翌日に起こりやすい現象だと言えます。

扁桃体とdlPFCの関係を示す図解。扁桃体は警報を伝え、dlPFCは考えて落ち着かせる
扁桃体(警報装置)と背外側前頭前野・dlPFC(制御室)の関係

3. 仕事のストレスは、なぜ寝つきを悪くし、眠りを浅くするのか

「疲れているのに眠れない」「眠ったはずなのに疲れが取れない」——これは矛盾しているようで、生理学的にはきちんと説明ができる現象です。

3-1. ストレスホルモン「コルチゾール」が眠りを妨げる

ストレスがかかると、視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)が活性化し、コルチゾールというホルモンの分泌が増えます。コルチゾールは本来、日中の覚醒や活動を支えるホルモンであり、分泌が増えている状態は「まだ休むフェーズではない」という信号を脳と体に送り続けます(Dickerson & Kemeny, 2004、複数レビューで引用)。

実験的にストレスを与えてから仮眠をとらせた研究では、ストレスを受けた条件のほうが、ストレスを受けなかった条件に比べて入眠までの時間(睡眠潜時)が長くなり、寝ついた直後の深いノンレム睡眠(徐波睡眠)が減少することが確認されています(Ackermann et al., Frontiers in Psychology, 2019)。就寝直前のストレスが翌日の記憶課題の成績にも悪影響を与えることを示した研究もあり、「寝る前のストレス」が単に寝つきを悪くするだけでなく、睡眠の質そのものを削っていることがうかがえます(Whitehurst et al., Frontiers in Neuroscience, 2020)。

3-2. 「高ストレスの1週間」は実際に総睡眠時間を削る

オフィスワーカーを対象に、ストレスの高い週と低い週それぞれで活動量計・唾液コルチゾール・眠気を測定したスウェーデンの研究では、ストレスの高い週は労働時間が伸びると同時に総睡眠時間そのものが減少し、夕方にかけての眠気が強まり、コルチゾールの日内変動パターンも平坦化(本来下がるはずの夕方の値が下がりにくくなる)することが示されています(Kecklund & Åkerstedt, Scandinavian Journal of Work, Environment & Health, 2004)。

これは「気合で乗り切った1週間」の翌週に、なぜか体が重く、寝ても寝ても眠い、という感覚の裏付けとも言えます。

3-3. 慢性的なストレスは「眠りの質」を媒介して悪循環になる

近年の縦断研究(同じ人を時間を追って調べる研究)では、ストレスが直接メンタルヘルスを悪化させるだけでなく、「ストレス→睡眠の質の低下→さらなる不調」という媒介経路(メディエーション)があることも示されています(Zhang et al., Frontiers in Psychology, 2024)。つまり睡眠の質は、ストレスの「結果」であると同時に、その後の不調を左右する「通り道」にもなっているということです。

4. 眠りと自律神経の関係——深い眠りは「副交感神経優位」で作られる

睡眠の質を語るうえで欠かせないのが、自律神経(交感神経・副交感神経)との関係です。

4-1. 深いノンレム睡眠は副交感神経が主役

心拍変動(HRV)を用いた研究では、覚醒時に優位だった交感神経の働きは、ノンレム睡眠に入るとともに低下し、深いノンレム睡眠(徐波睡眠)でもっとも副交感神経(迷走神経)が優位になることが示されています。レム睡眠になると、この副交感神経優位の状態は崩れ、交感神経の働きが覚醒時に近いレベルまで戻ることも報告されています(Baharav et al., Neurology, 1995)。

高齢者を対象にした近年の研究でも、深いノンレム睡眠中の心拍変動(副交感神経活動の指標)が高い人ほど、自律神経の中枢的なネットワークの働きが良好であることが確認されており、「深く眠れているかどうか」は、単なる感覚ではなく自律神経の状態として測定可能であることが分かっています(Chen et al., 2023, Brain Communications)。

4-2. 仕事のストレスは「交感神経を興奮させたまま」眠りに入らせる

ここで3章の内容とつながります。仕事のストレスによってコルチゾールや交感神経系が興奮した状態のまま就寝すると、本来「副交感神経優位」に切り替わるべき深い眠りの段階に入りにくくなります。これが、「疲れているのに寝つけない」「寝ても浅い」という状態の生理学的な正体です。

言い換えると、睡眠の質を上げるということは、就寝前にどれだけ交感神経の興奮を鎮め、副交感神経にスイッチを入れられるか、という自律神経のコントロールの問題でもあるのです。

4-3. 呼吸で副交感神経のスイッチを入れる

この自律神経の切り替えに関して、比較的再現性の高い知見があります。それが「ゆっくりとした腹式呼吸」です。

複数のシステマティックレビュー・メタ解析により、1分間に6回程度までゆっくりとした呼吸(スローブリージング)を行うと、心拍変動における副交感神経(迷走神経)活動の指標が有意に増加することが確認されています(Fincham et al., ScienceDirect, 2022のメタ解析など)。単発のセッションでも不安や主観的ストレスが軽減したという報告もあり(Magnon et al., Scientific Reports, 2021)、「今日から使える」対処法として現実的です。

就寝前に5分ほど、鼻から吸って口や鼻からゆっくり長く吐く呼吸を繰り返すことは、根性論ではなく、自律神経を睡眠に適した状態へ近づけるための、研究に裏付けられた準備運動と言えます。

ストレスと睡眠の悪循環と、腹式呼吸による介入を示す図解
仕事のストレス→交感神経優位→浅い眠り→疲労、という悪循環と、呼吸による介入ポイント

5. 睡眠導入剤という選択肢——メリットとデメリットを正しく知る

「生活習慣を整えるだけでは限界がある」という場合、医療機関で睡眠薬(睡眠導入剤)を処方してもらうことも、有効な選択肢の一つです。ただし、種類によって効き方もリスクも大きく異なるため、良い面だけでなく注意点も理解しておく必要があります。

5-1. 睡眠薬にはいくつかのタイプがある

  • ベンゾジアゼピン系睡眠薬:脳の活動を広く鎮静させることで入眠を助ける、古くからあるタイプ
  • 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(Z薬):ベンゾジアゼピン系と作用点は近いが、より睡眠に関わる部分に作用が絞られているとされるタイプ
  • メラトニン受容体作動薬:体内時計に働きかけ、自然な眠気のリズムを後押しするタイプ
  • オレキシン受容体拮抗薬(デエビゴ、ベルソムラなど):覚醒を保つ脳内物質「オレキシン」の働きをブロックすることで眠りに導く、比較的新しいタイプ

5-2. メリット:即効性と、選択肢の広がり

生活習慣の改善だけでは数週間〜数ヶ月かかることもある不眠の改善を、薬物療法は比較的早く実感させてくれることがあります。また近年登場したオレキシン受容体拮抗薬などは、DMMオンラインクリニックの解説によれば、従来のベンゾジアゼピン系と作用の仕組みが異なるため、耐性・身体依存・離脱症状のリスクが比較的低いと考えられているとされています。「薬に頼る=危険」と一括りにせず、医師と相談しながらタイプを選べる時代になっている点は、知っておく価値があります。

5-3. デメリット:特にベンゾジアゼピン系の依存・認知機能への影響

一方で、日本睡眠学会と厚生労働科学研究班が策定した「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」では、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の長期・高用量・多剤併用によって、薬物依存や認知機能障害などの副作用リスクが高まることが明記されています。厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルでも、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の「治療薬依存」が個別の対応マニュアルとして作成されているほど、注意が必要な領域とされています。

日本国内の処方データを分析した研究(大学病院における長期処方実態の解析)でも、催眠を目的としたベンゾジアゼピン系薬剤(エチゾラムなど)の処方は年々減少傾向にあるものの、依然として一定数が長期処方されている実態が報告されています。ガイドラインには減薬のための「漸減法」「隔日法」といった出口戦略も明記されていますが、自己判断での減薬・断薬は離脱症状(不眠の悪化、不安の増大など)のリスクがあるため、必ず処方医と相談しながら進める必要があります

5-4. 使うなら「生活習慣とセットで、医師の管理下で」

まとめると、睡眠導入剤は「悪いもの」でも「万能薬」でもありません。

  • 短期的な入眠困難のリセットには有効な手段になり得る
  • ただし種類によって依存性・翌朝への影響(持ち越し効果)が異なる
  • 自己判断での開始・増量・中断は避け、必ず医療機関を通す
  • 生活習慣(光・アルコール・呼吸法など)の改善とセットで使うことで、将来的に薬に頼る量を減らしていける可能性がある

「眠れないのはだらしないからではない」という前提のもと、恥ずかしがらずに医療機関に相談する選択肢を持っておくことが、40代の回復力を守るうえで重要です。

6. 飲酒——「寝酒」が眠りを浅くする理由

仕事終わりの一杯が習慣になっている人も多いはずです。しかしアルコールは、寝つきを一時的に良くする一方で、眠りの構造(睡眠アーキテクチャ)を確実に乱します。

3夜連続でポリソムノグラフィー(睡眠脳波)測定を行った研究では、就寝前のアルコール摂取によって深いノンレム睡眠(徐波睡眠)に入るペースは早まる一方、レム睡眠の量は明確に減少し、後半にかけて浅い睡眠(N1)が増えて中途覚醒が増える、という結果が報告されています(Colrain et al., SLEEP, 2024)。27件の対照実験を統合したシステマティックレビュー・メタ解析でも、アルコール摂取量が1g/kg増えるごとにレム睡眠に入るまでの時間が約30分延びるなど、量依存的に睡眠の質が悪化することが示されています(Gardiner et al., 系統的レビュー)。

「寝つきが良くなった気がする」という体感は、実際には眠りの質を犠牲にして得ている可能性が高いということです。寝酒を習慣にしている場合、それが「疲れが取れない」原因の一つになっていないか、見直す価値があります。

7. 画面時間——就寝前のスマホが体内時計を狂わせる

厚生労働省 e-ヘルスネットの解説によれば、夕方から深夜にかけて浴びる光は体内時計を後ろにずらす(夜型にする)作用があり、その力は夜が更けるほど強くなります。とりわけスマートフォンやタブレットの画面に多く含まれるブルーライト(青色光)は、体内時計への影響が大きいと指摘されています。

メカニズムとしては、網膜がブルーライトを強く感知すると、その情報が脳の松果体に伝わり、「今は昼間だ」という誤った信号が送られることで、眠気を誘うホルモン・メラトニンの分泌が抑制されるとされています。メラトニンの分泌が減ると、夜になっても自然な眠気が訪れにくくなり、寝つきの悪化や、翌朝に疲れが残る睡眠の質の低下につながります。

対策として現実的なのは、次のようなシンプルな工夫です。

  • 就寝1〜2時間前はスマホ・PCの使用を控える、または画面の輝度を落とす
  • スマホのナイトモード・夜間モードを就寝前の数時間だけ使う(日中まで使うと逆に体内時計の同調を妨げる可能性があるため注意)
  • 部屋の照明を暖色系にし、明るさを落とす

「完全にやめる」よりも「就寝前だけ意識する」ほうが、忙しい40代にとって継続しやすい現実的な対策です。

8. 姿勢と表情——回復不足は「見た目」にそのまま出る

1章で紹介したAxelssonらの研究が示す通り、寝不足は顔の血色・目の開き方・口角の位置といった客観的な指標にも変化を与えることが分かっています(Holding et al., Journal of Sleep Research, 2019)。これは「気合を入れて表情を作る」ことでは根本的に解決しません。

一方で、姿勢は比較的すぐに整えられる要素です。デスクワークで前かがみの姿勢が続くと、呼吸が浅くなりやすく、これは6章・4章で触れた「副交感神経を優位にする呼吸」の妨げにもなります。

  • 1時間に1回、肩甲骨を寄せて胸を開くストレッチを入れる
  • 画面の高さを目線に合わせ、首が前に出る姿勢を避ける
  • 就寝前の腹式呼吸の際は、猫背のままではなく、軽く胸を開いた姿勢で行う

疲れて見えるかどうかを分けているのは、生まれ持った顔立ちよりも「回復できているかどうか」のサインである、という前提に立つと、取り組むべきことがシンプルになります。

9. 受診の目安——「様子見」でいい場合、いけない場合

以下のようなサインがある場合は、生活習慣の工夫だけで様子を見続けず、医療機関(睡眠外来、心療内科、かかりつけ医など)に相談することを検討してください。

  • 寝つくまでに30分〜1時間以上かかる状態が週3回以上、1ヶ月以上続いている
  • 夜中に何度も目が覚め、そのたびになかなか寝つけない
  • 十分な時間眠っているはずなのに、日中の強い眠気や集中力の低下が続いている
  • いびきや呼吸の停止を指摘されたことがある(睡眠時無呼吸症候群の可能性)
  • 気分の落ち込みや興味関心の低下が2週間以上続いている

厚生労働省も睡眠と生活習慣病・メンタルヘルスの関連について注意喚起をしており、「寝れば治る」で済ませずに、専門家の判断を仰ぐことは弱さではなく、回復力を守るための合理的な選択です。

10. 1日の修正——今日からできる小さなリセット

最後に、ここまでの内容を1日の流れに落とし込みます。

タイミング やること 目的
カーテンを開けて光を浴びる 体内時計をリセットし、14〜16時間後のメラトニン分泌の準備をする
日中 ストレスを感じたら一度呼吸に意識を向ける 交感神経の過剰な興奮を都度リセットする
夕方以降 アルコールは「寝る前」を避け、量を意識する レム睡眠・深い睡眠の質を守る
就寝1〜2時間前 画面の輝度を落とす、夜間モードを使う メラトニン分泌の抑制を最小限にする
就寝前5分 ゆっくりとした腹式呼吸(1分6回程度) 副交感神経を優位にし、深い睡眠に入りやすくする
起床後 疲れが抜けない日が続くなら記録をつける 受診の判断材料にする

一つひとつは小さな工夫ですが、共通しているのは「気合でどうにかする」のではなく、脳と自律神経の仕組みに沿ったリセットだという点です。

11. 回復をサポートする道具たち——あくまで「補助」として

生活習慣の土台があってこそ効果を発揮するものですが、回復を後押しする道具として、以下のようなアイテムも選択肢に入れてみてください。いずれも「これを使えば不眠が治る」というものではなく、就寝環境を整えるための補助的な位置づけです。

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寝室の温度・湿度を整える布団



寝具や着衣を変えたからといって、仕事のストレスそのものがなくなるわけではありません。しかし、呼吸がしやすい・体温調整がしやすい環境を整えることは、副交感神経が優位になりやすい条件を作るという意味で、4章で紹介した自律神経の仕組みと矛盾しない、理にかなった投資だと言えます。

まとめ

  • 「疲れて見える」のは主観ではなく、他者からも客観的に観測される現象(Axelssonらの研究)
  • 仕事のストレスに振り回されるかどうかは、扁桃体と背外側前頭前野(dlPFC)のバランスの問題であり、鍛えられる回路でもある
  • ストレスによるコルチゾール上昇・交感神経の興奮は、寝つきを悪くし、深い眠り(徐波睡眠)を減らす
  • 深い眠りは副交感神経が優位な状態で作られる。ゆっくりとした呼吸はそのスイッチを助ける、研究に裏付けられた方法
  • 睡眠導入剤は有効な選択肢だが、種類によって依存性が異なり、自己判断での使用・中断は避けるべき
  • アルコールと就寝前のスマホは、体感以上に睡眠の質を削っている
  • 環境を整える寝具・ウェアはあくまで補助。土台は生活習慣と、必要なら医療機関への相談

40代の色気や余裕は、無理な若作りからではなく、きちんと回復できている状態から生まれます。今日紹介した小さな修正から、一つずつ試してみてください。


主な参考文献・出典
Axelsson J, et al. Beauty sleep: experimental study on the perceived health and attractiveness of sleep deprived people. BMJ. 2010;341:c6614.
Sundelin T, et al. Negative effects of restricted sleep on facial appearance and social appeal. R Soc Open Sci. 2017;4:160918.
Holding BC, et al. The effect of sleep deprivation on objective and subjective measures of facial appearance. J Sleep Res. 2019.
Qin S, et al. Anxiety and Stress Alter Decision-Making Dynamics and Causal Amygdala-Dorsolateral Prefrontal Cortex Circuits During Emotion Regulation in Children. Biol Psychiatry. 2020.
Morgan CA III, et al. Prefrontal cortex, amygdala, and threat processing: implications for PTSD. Neuropsychopharmacology. 2021.
Zhao Z, et al. Improving Emotion Regulation Through Real-Time Neurofeedback Training on the Right Dorsolateral Prefrontal Cortex. Front Hum Neurosci. 2021.
Ackermann S, et al. Psychosocial Stress Before a Nap Increases Sleep Latency and Decreases Early Slow-Wave Activity. Front Psychol. 2019.
Whitehurst LN, et al. Bedtime Stress Increases Sleep Latency and Impairs Next-Day Prospective Memory Performance. Front Neurosci. 2020.
Kecklund G, Åkerstedt T. Apprehension of the subsequent working day is associated with a low amount of slow wave sleep. Scand J Work Environ Health. 2004.
Zhang B, et al. The impact of stress on sleep quality: a mediation analysis based on longitudinal data. Front Psychol. 2024.
Baharav A, et al. Fluctuations in autonomic nervous activity during sleep displayed by power spectrum analysis of heart rate variability. Neurology. 1995.
Chen X, et al. Heart rate variability during slow wave sleep is linked to functional connectivity in the central autonomic network. Brain Commun. 2023.
Fincham GW, et al. Effects of voluntary slow breathing on heart rate and heart rate variability. 2022.
Magnon V, Dutheil F, Vallet GT. Benefits from one session of deep and slow breathing on vagal tone and anxiety. Sci Rep. 2021;11:19267.
Colrain IM, et al. Altered sleep architecture following consecutive nights of pre-sleep alcohol. SLEEP. 2024.
Gardiner C, et al. The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults: a systematic review and meta-analysis.
厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
日本睡眠学会・厚生労働科学研究班「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」
厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル「ベンゾジアゼピン受容体作動薬の治療薬依存」(令和4年2月)

よくある質問

疲れて見えるのは寝不足のせいですか?

研究では、寝不足の顔は同一人物でも「より疲れて見える」「より魅力的でない」と評価されることが示されています(Axelsson et al., 2010)。主観ではなく客観的に観測される現象です。

仕事のストレスが強いと、なぜ眠りが浅くなるのですか?

ストレスでコルチゾールが増え交感神経が興奮した状態が続くと、深いノンレム睡眠に必要な副交感神経優位への切り替えが起きにくくなるためです。

睡眠導入剤はデメリットがありますか?

種類によります。従来のベンゾジアゼピン系は長期使用で依存や認知機能への影響が指摘されています。自己判断での使用・中断は避け、医療機関で相談してください。

寝る前の飲酒は睡眠に良くないのですか?

寝つきは良くなったように感じますが、研究ではレム睡眠が減少し後半に浅い睡眠が増えることが示されており、睡眠の質はむしろ低下します。

参考情報

  • Axelsson J, et al. Beauty sleep: experimental study on the perceived health and attractiveness of sleep deprived people. BMJ. 2010;341:c6614.
  • Sundelin T, et al. Negative effects of restricted sleep on facial appearance and social appeal. R Soc Open Sci. 2017;4:160918.
  • Holding BC, et al. The effect of sleep deprivation on objective and subjective measures of facial appearance. J Sleep Res. 2019.
  • Qin S, et al. Anxiety and Stress Alter Decision-Making Dynamics and Causal Amygdala-Dorsolateral Prefrontal Cortex Circuits During Emotion Regulation in Children. Biol Psychiatry. 2020.
  • Morgan CA III, et al. Prefrontal cortex, amygdala, and threat processing: implications for PTSD. Neuropsychopharmacology. 2021.
  • Zhao Z, et al. Improving Emotion Regulation Through Real-Time Neurofeedback Training on the Right Dorsolateral Prefrontal Cortex. Front Hum Neurosci. 2021.
  • Ackermann S, et al. Psychosocial Stress Before a Nap Increases Sleep Latency and Decreases Early Slow-Wave Activity. Front Psychol. 2019.
  • Whitehurst LN, et al. Bedtime Stress Increases Sleep Latency and Impairs Next-Day Prospective Memory Performance. Front Neurosci. 2020.
  • Kecklund G, Åkerstedt T. Apprehension of the subsequent working day is associated with a low amount of slow wave sleep. Scand J Work Environ Health. 2004.
  • Zhang B, et al. The impact of stress on sleep quality: a mediation analysis based on longitudinal data. Front Psychol. 2024.
  • Baharav A, et al. Fluctuations in autonomic nervous activity during sleep displayed by power spectrum analysis of heart rate variability. Neurology. 1995.
  • Chen X, et al. Heart rate variability during slow wave sleep is linked to functional connectivity in the central autonomic network. Brain Commun. 2023.
  • Fincham GW, et al. Effects of voluntary slow breathing on heart rate and heart rate variability. 2022.
  • Magnon V, Dutheil F, Vallet GT. Benefits from one session of deep and slow breathing on vagal tone and anxiety. Sci Rep. 2021;11:19267.
  • Colrain IM, et al. Altered sleep architecture following consecutive nights of pre-sleep alcohol. SLEEP. 2024.
  • Gardiner C, et al. The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults: a systematic review and meta-analysis.
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
  • 日本睡眠学会・厚生労働科学研究班「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」
  • 厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル「ベンゾジアゼピン受容体作動薬の治療薬依存」(令和4年2月)